『青春デンデケデケデケ』監督:大林宣彦 原作:芦原すなお ('92)


ringoさんがブログで紹介されていた作品です。ネットで調べていたら、公開当時の淀川長治氏のレビュー(http://www.sankei.co.jp/mov/yodogawa/92/921013ydg.html)を発見。引用しながら感想を記します。

少年群像映画は甘ったれると鼻持ちならぬ。この監督にはややその心配ありだ。ところがこれはスパッとやったよ。甘えは消し飛び記録タッチ。だからキャメラと編集が力を入れた。たるみを避けた。なるほど編集はこの映画の大林宣彦監督自身だったのだ。二時間十五分。ガキのガンガン・ロックではたまったもんじゃないと用心。ところがその昔のチャールズ・レイの少年群像映画『懐しの泉』だ。少年少年少年の青春を意識して会話にスピード。この子供映画、会話がスロー・テンポでさらに甘ったるくなったらおしまいだ。

さすがに目の付け所が違う。そうだ。確かに、会話のテンポが悪いとだらけてしまう。ただし、やや台詞の聞き取り辛いところはあった。

さて映画は一九六〇年。この時代を狙ったのもノスタルジィ。ロック、ついにバンド成功の少年たち一人ひとりの個性がよろしく、特に寺の息子が面白い。巧いとは言うまい。面白いのだ。監督、ドキュメンタリィ・タイプで少年たちに早口でしゃべらせ、特にこの寺の子が早口で聞きとりにくいのが気になったが、バイクで ころも(ゝゝゝ)姿でお参りにゆくシーンが面白く楽しい。ロック発表会でヤンヤの大騒ぎの中、老婆が手を叩いてのロックびいきは、ちょいとやりすぎ。

'60年ではなく、'65年です。仕方がないかもしれぬが、基本的に戦前生まれの人はビートルズ登場以前と以後では、ロック史も違うとは認識してないのでしょうね。
寺の子役の大森嘉之は、台詞がよく聞き取れて、あえて言うと「坊主臭さ」がよく出ていた。大森は、その年の新人賞を受賞したとのことだが、納得である。氏は「巧いとは言うまい。面白いのだ。」と言っている。「巧い」演技ではないかもしれぬが、「的確」な演技だ。多分、大森を抜きにしてはこの映画を語ることは出来ないだろう。
個人的には、エロ本を段階を分けて主人公(林泰史)に渡し、返してもらったエロ本の本棚への隠し方がいい。男性なら、心当たりのある方が多いのでは?
バンドの演奏も、高校生バンドがやるような曲を下手な歌でやっているところが、なんとも微笑ましい。「I Feel Fine」も「Johnny B. Goode 」も下手で高校生のバンドそのものだ。(これ褒め言葉です)
あえて言えば、'65-'68年初頭を舞台にしているのだったら、もっとビートルズストーンズが露出してもいいのでは?と勝手な注文をつけている。

しかし監督の個性があふれた映画だ。思えば昔の松竹の清水宏監督がよく撮っていた少年映画を思い出し、フェリーニの『青春群像』までをも思い出した。要するに本当に映画好きなんだな 。大林監督バンザイ!

最後にフェリーニの『青春群像』を出すところで、氏のこの映画への高評価が伺える。本当に「大林監督バンザイ!」と鑑賞後言いたくなる。大林作品の中でも、傑作の一つとして数えられる作品だ。
ロック好きの40代以上の方は、面白く見ることができる、と思います。