「転校生」'82 大林宣彦/監督  山中恒/原作

転校生 [DVD]

転校生 [DVD]

大林宣彦の名を世に知らしめた名作。新たにとやかく言う必要がないほど観られてきた映画であるが、セルフ・リメイクして来年公開予定なので、おさらいを兼ねて久々に鑑賞。

大林監督の青春映画の方法論は、十代のまだ未熟な役者をその時にしかない「若さ」という一瞬の輝きを上手に引き出し、それを映画に組み込む。そして、画面を引き締めるためにしっかりした大人の役者を脇に配す、と勝手に解釈している。

<あらすじ>
広島県尾道市斉藤一夫は8ミリ好きの中学三年生で、悪友たちと女子更衣室をのぞいたり悪ガキぶりを発揮するごく普通の少年である。そんな彼のクラスにある日、斉藤一美という、ちょっとキュートな少女が転校して来た。一美が大野先生に紹介された途端、一夫を見て叫んだ「もしかしてあなた一緒に幼稚園に行っていたデベソの一夫ちゃんじゃない?」二人は幼馴染みだったのだ。久しぶりに一夫と再会した一美は大喜びだが、子供の頃の自分の恥部を知られている一夫にとっては大迷惑。その日の帰り道、神社の階段の上で、一夫はつきまとう一美めがけてコーラの空缶を蹴飛ばした。驚いた一美は階段から落ちそうになり、一夫は押さえようと抱きつくが、二人はそのままころげ落ちた……。しばらくたって二人は意識をとり戻し、それぞれの家に帰るのだが、二人の体が入れ替っていることに気がつき、愕然とする。男の子の体になってしまった一美は泣き出すが、とりあえず、お互いの家族、友人の中で生活することにした。突然、男っぽくなった一美や、逆に女っぽくなった一夫にそれぞれの家族は戸惑うが、まさか入れ替っているなどとは考えてもみない。学校でも一夫が突然勉強ができるようになって周囲が驚くのだが、悪友たちがオカマっぽくなった一夫をからかうと、一美が怒って連中をのしてしまうのだ。そんなある日、一美はボーイフレンドの弘と会うことになった。一夫は一美を演じているうちに弘をからかったため、一美を怒らせてしまう。やがて、一夫が父の転勤で横浜に引っ越すことになった。いつまでたっても元に戻らぬ二人は、絶望的になっていき、特に一美は自殺を考えるまで追い込まれてしまう。が、一方で、互いの体に嫌悪感さえ覚えながらも、徐々に異性としての愛情が芽生えていく。一夫の引っ越しが間近に迫ったある日、あの神社の階段の上で、二人はふとしたハズミで再び転げ落ちてしまった……。気がついてみると、二人は元の一夫と一美に戻っていた。「オレ一美が大好きだ」「この世の中で誰よりも一夫君が好き」泣きながら抱き合う二人。数日後。引っ越し荷物を積んだコンテナ・トラックに一夫と両親が乗り、一美が見送りに来ている。動き出したトラックの助手席から、追って来る一美を8ミリで撮る一夫。「サヨナラ、オレ」「サヨナラ、あたし!」。
                   goo映画 より

今見ても、小林聡美尾美としのりが新鮮で生き生きしている。

小林聡美は、十代の女の子からすれば恥ずかしくなるようなシーンを堂々と演じている。女優としての開花を予感させた演技。

尾美としのりも、女の子の仕草が妙に上手い。ボクは東京出身なので思わなかったが、京都人の連れ合いと娘は、尾美としのりが「やめてよ!」と言っていやがるシーンに大笑いでした。


主人公の少年・少女が、お互いの体が入れ替わることで、何がどう変わりどう感じたのか。それは見る人一人一人が、味わえればいいのだろう。映画の見方に押しつけは禁物!


興味深いことに、本作「転校生」の前年に角川春樹・製作で「ねらわれた学園」を撮っている。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/1604/oba_nenpyou.html


多分、後者の方が予算は潤沢であるのかもしれないが、作品の完成度は比べようもない。
お金はあればそれに越したことはないけど、名作になる必要十分条件ではないのだろう。


蛇足です。「尾道」の街のたたずまいは、本当に素晴らしい。再確認できました。