[映画]『東京のえくぼ』'52 松林宗恵/監督 小国英雄/脚本

東京のえくぼ [DVD]
近年、『ALWAYS 三丁目の夕日』が昭和33年を舞台に映画化され、「懐かしい東京の風景」の再現が取りざたされた。が、「それなら戦後から東京オリンピック前の映画を観れば良いのでは」と思っていた。


この映画も懐かしい風景が見られる。相生橋、上野公園、渋谷東急のロープウェイ、下町の町並みが映し出されると、内容とは関係なく注視してしまう。

あらすじ
河上伸子は紀の國屋物産の入社試験に行く途中のバスの中でスリに財布をすられた。いち早く気がついた彼女は、自分の傍らに立ってニヤニヤ笑っていたロイド眼鏡に口ひげの男がてっきりスリだと思って、警察へ突き出した。その時立ち会った婦人警官は伸子の親友京子だった。伸子はその後で入社試験を受けて、みごとに難関をパスし、紀の國屋物産の社長秘書に採用された。ところがその社長がその日から失踪して行方不明という騒ぎになった。翌日その新聞記事を見て驚いたのは伸子と京子であった。昨日伸子が突き出したスリがその社長 だった。出社第一日、伸子と社長紀の國屋文太郎との最初の対面では、社長の前に山積みされた書類が伸子を窮地から救ってくれた。そして文太郎から、盲目判を押す機械のような自由のない社長業の嘆きを聞かされたのであった。伸子は京子と相談して文太郎を脱出させ、伸子の家に預かることにした。眼鏡を取り口ひげを剃った文太郎は、貧しいが人のよい人々が住む裏町に住んでみて、初めて人生の真実に触れたような気がした。それと同時に伸子を通じて会社の状況を従業員の立場からつぶさに知ることができた。伸子の父大作の紹介で紀の國屋の子会社の職工に就職した文太郎は、やがて時期を見てその正体を現し、会社を改革するとともに名実ともに備わった社長として第一歩を踏み出したのだった。

東京のえくぼ(1952) - goo 映画

映画は、下町人情ドラマにラヴ・コメディをまぶしたような感じ。「人を信頼する」ということをやんわりと主張している。

主演は、上原謙丹阿弥谷津子なのだろうが、個人的には、昭和20年代の東京の風景と、柳家金語楼清川虹子古川ロッパ高峰秀子の存在感に目が…。

隅田川東京湾も綺麗だったが、それ以上に、上野動物園の「お猿の電車」は懐かしかった。確か幼稚園の遠足で乗った記憶がある。
でも、渋谷の東急のロープウェイは、いつまであったのだろうか?これは映画で観るだけで記憶にはない。


柳家金語楼清川虹子の夫婦は、なつかしいお父さんとお母さんという味が良く出ている。まさに、下町の親父とお袋である。
古川ロッパの重役もおもろい貫禄がある。

ちょい役ながら高峰秀子の存在感は、映画スターの何たるかを教えてくれる。『カルメン故郷に帰る』『宗方姉妹』『二十四の瞳』『流れる』『放浪記』『女が階段を上る時』等々、どんな役柄の設定も性格も演じているのに、高峰秀子の存在感を残しているところが流石。