『三文役者』'00  新藤兼人/監督&脚本

三文役者 特別編 [DVD]
beatleさんのブログで紹介されていた作品です。
バイ・プレーヤーの殿山泰司を描いた、半分ノンフィクションの映画。監督は、彼をよく知る新藤兼人

<あらすじ>
1915年10月17日、タイちゃんこと殿山泰司は、銀座の“おでんお多幸"の長男として生まれ、36年、俳優となった。36歳の時、タイちゃんは京都の喫茶店“フランソワ"のウェイトレス、キミエと出会い相思相愛の仲になる。ところが、彼には既に鎌倉に内縁の妻・アサ子がいたのだ。タイちゃんは、女優のオカジこと乙羽信子を介してアサ子に別れ話を持ち出すが、逆にアサ子はタイちゃんに黙って婚姻届を出し、養女まで迎えてしまう。しかし、東京でタイちゃんと同棲を始めたキミエも負けてはいない。対抗心をむき出しにして、兄の息子・安夫を養子に取ったのだ。こうして、たちまち二児の父親になってしまったタイちゃんであったが、仕事では「愛妻物語」「裸の島」といった素晴らしい作品に恵まれ、しかも「人間」では数々の賞に輝いた。その後、肝硬変、母の死、子供たちの結婚、浮気事件??、様々な出来事を経て、古希を迎える年となったタイちゃん。選り好みせず仕事をしてきた彼だったが、このところめっきり仕事の依頼が減っていた。ところが余命半年の診断を受けた時、皮肉にも3本の仕事が舞い込んでくる。そして、堀川弘通監督の「花物語」への出演を終えた直後の1989年4月30日、ジャズとミステリィをこよなく愛した三文役者・タイちゃんは、キミエに看取られながら他界した。

三文役者(2000) - goo 映画
三文役者(2000) - goo 映画

この映画の成功は、新藤兼人乙羽信子に因るものが大である。竹中直人の演技は「殿山泰司」をよく研究していていいのだが、全編あの調子でやられると飽きてしまいそうだ。そこで、何度も入る乙羽信子の対話形式の証言が、いいアクセントとなり、映画を引き締めている。


この人の演技は、最近DVDで『狼』('55 新藤兼人/監督)を観た。中年の貧しい保険外交員の役であった。本当に実在するかのような人物を演じていた。飄々としているのだが、観る者に何がしかの印象を残していく。
脇役あっての主役ということを実感。この人の演技、見事である。
狼 [DVD]

半世紀ほど前の映画を観て思うこと。


最近、主役のような脇役が多いのでは?
主役を食う脇役というのとは違うのでは、と思った。


また、殿山泰司は、俳優としてだけでなく随筆家としても個性的で、『三文役者あなあきい伝1、2』『JAMJAM日記』等の著作がある。
彼の著作を読むと、几帳面な面・ナイーブな面・戦死した弟への想い、そして反骨精神。映画には描ききれなかった側面をいろいろ持っていた人である。
JAMJAM日記 (ちくま文庫)