『狼』'55  新藤兼人/監督&脚本

狼 [DVD]


昨夜は、暑くてどうも眠れず。よって、深夜の映画鑑賞と相成る。

『陸に上った軍艦』で血気盛んなところを見せている新藤兼人の半世紀以上前の作品。
社会派サスペンスといった趣。「現金車襲撃」よりも、そこに至ったプロセスが興味深い。襲撃犯の家庭や性格がよく描かれているので、薄っぺらな感じはない。

<あらすじ>
戦争未亡人の秋子、元銀行員原島、元自動車修理工三川、元映画脚本家吉川、音楽学校出身の未亡人富枝の五人は東洋生命の外務員に採用された。彼等は半年で五百万円の契約を取る責任を負い、初め二十二人いた仲間も次第に減り半年後には彼等五人だけになって了った。
五人は互に励まし合って来たが追いつめられ、自殺をするか強盗をして金を手に入れるかする他に途がなくなって了った。絶望した五人は三川と吉川の提案で、公金輸送の定期郵便車を襲う決意をした。犯行の朝、三川は渋谷で外人用の高級車を盗み、四人を乗せて現場の横浜市の南の国道狼坂へ向った。
秋子と富枝が見張りに立ち、三川、原島、吉川等は日本刀と猟銃をつきつけ、運転手等を高級車後部のトランクに押しこめ、立川で車を捨てた。七万円ずつの分け前を取り、彼等は二度と会わぬことに決めた。
秋子と離れ難くなった原島は、女房に手切金を渡して、秋子の家を訪れた。翌朝、吉川は質札から足がついて逮捕され、また富枝は愛児二人を道連れに東京湾汽船から投身した。秋子と原島は、新聞でそれを知り自首を決したが、既に逮捕の手は二人の身辺に迫っていた。
a href="http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD24323/index.html" title="狼(1955) - goo 映画" target="_blank">狼(1955) - goo 映画


結局、強盗は失敗に終わってしまう。だからといって、「盗みはいけません」とか「お金は額に汗して得るもの」とかの政府公報のようなものは感じない。彼らが強盗をするに至った背景には、あまりにも過酷な現実がある。そして、その現実−戦争未亡人とか国策映画の脚本家とか−は、国家政策と無縁ではない。


「戦争は個人の生活までも破壊する」といったテーマは、新藤兼人に脈々と流れているこだわりなのだなあ、と思う。最近の氏のインタビューを聞いたので、そこでの発言により、前回観たとき以上に本作を興味深く鑑賞できた。


最初、先日録画しておいた『渋谷怪談』を観たのですが、あまりの薄っぺらなストーリーに中断。
しかしまあ、ただ叫べばいいってもんじゃないだろうに、とイモ役者をみると感じます(苦笑)
唯一の救いは、堀北真希のみ。演技の上手い下手ではなく、彼女には存在感がありますね。