『雨鱒の川 River of first love』'04

磯村一路/監督 川上健一/原作 小林弘利、ぜんとうひろよ、安堵麗、磯村一路/脚本

雨鱒の川 ファースト・ラブ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]


先日放映されてものを録画。深夜、家族が寝静まってから鑑賞。
北海道の美しく雄大な景色がよく撮れている。画面の美しさにしばし見とれる。

<あらすじ・解説>


母(中谷美紀)と2人で暮らす心平は、絵を描くことが大好きな8歳の少年。幼なじみの小百合は聴覚が不自由だが、心平とは意思が通じ合う。ある日、心平の描いた雨鱒の絵がパリの絵画展で特賞に選ばれた。祝賀会の夜、母は雪道で倒れ喜びに浸りながら息を引き取る。14年後、小百合の父、高倉の酒造で働いていた心平は、高倉の計らいで絵を描くために東京へ出ることに。雨鱒の川も小百合もいない東京で、何も描けずにいた心平に故郷から小百合の結婚を知らせる手紙が届く。


北海道の広大な大地を舞台に、磯村一路監督が描く、淡く切ない初恋の物語。純粋に夢を描き続けた心平、言葉にならない声で必死に気持ちを伝えようとする小百合、小百合を一途に思い続けた年上の英蔵、そして心平を無償の愛で包み込んだ母の温かさが伝わる。そんな人間模様を彩るのは、豊かな大自然の風景だ。


空へ続いていくような緑の土地に、ぽつんと佇む赤い屋根の家、いつも遊んでいる雨鱒の川、母が倒れる雪道のシーンなど、まるで心平が描く絵のように力強くて美しい。幻想的でファンタジックなデジタル映像も加えられ、いっそうノスタルジーを誘っている。今回、初めて映画音楽を担当したのは葉加瀬太郎。目にも耳にも、胸の奥にも郷愁がじわりとしみ込む、愛の物語。
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心平・小百合の子供時代は、須賀健太志田未来。成長してからは、玉木浩&綾瀬はるか
ファンの人には申し訳ない。子役の出ている場面のほうが、映画としてはいい出来。
tougyouさんご指摘のように、子供時代の場面はよくできている。
成長してからの部分が、平面的というか物語を成立させるための辻褄合わせをしているような印象を受ける。


心平と小百合の心の葛藤が、駆け落ちするときにも感じられませんでした。←個人的感想ですよ。


中谷美紀の病を隠して気力で頑張る母親。
阿部寛の心に後ろめたさを抱えながら蔵を守ろうとする小百合の父親。
星由里子−久々に観ました−の温かく小百合を見守る祖母。
柄本明の木訥だけど、心優しい老人。
というように、個々の演技には印象に残るものがあるのです。


特に、中谷美紀の母親役が、よかった。夫を山の遭難で失い、畑を一人で耕し、一人息子を育てる美しい未亡人を力みのなく演じていた。この女優が、映画のヒロイン役に抜擢されるのが納得できる演技と存在感。


でもなあ、全体がぼやけてしまっている。
映画としては、焦点を絞り切れていないというか、どうも散漫に成ってしまっている。
実った恋、実らなかった恋、それを雨鱒夫婦を暗喩として用いているのは上手い。でも、中途半端。


いろいろなエピソードを盛り込みすぎなのだろう。それで、テーマがぼやけてしまっている、と思う。
母と息子・心平の絆を中心とした物語とするのか、心平と小百合の恋を中心とするのか、どっちつかずになっている。


原作を読んでいないので、断定的なことは言えないが、どうも原作のエピソードを盛り込みすぎて、ベクトクが分散しているのではないだろうか。


個々の場面や個々の演技が素晴らしいのに、その全体像はどうも薄ぼんやりしている。
失敗作とはいわないが、いわゆる「ビミョー」な作品、とまとめておく。