『時をかける少女』’83  大林宣彦/監督 筒井康隆/原作 剣持亘/脚本

時をかける少女 [DVD]


原田知世のデビュー当時の作品。公開当時、薬師丸ひろ子主演『探偵物語』と二本立てで観た。
あのときから『探偵物語』より、こちらの作品の方が個人的には好きだった。
このたび久々にDVDで鑑賞した。


最近は、TVではCMで見るばかり。だが、映画では地味ながらも佳作といえる作品に出演している。昨年も映画『となり町戦争』で主演していた。


この原作は、映画以前に、NHKの少年少女向けドラマで一度制作されていた。(TVドラマはたまに見ていた記憶がある程度<苦笑>)
本作は角川映画ということもあってか、ヒロインの原田知世にスポットを当てた、SFというよりファンタジー青春映画という趣だ。

<あらすじ>
土曜日の放課後、掃除当番の芳山和子は実験室で不審な物音を聞きつけ、中に入ってみるが人の姿はなく、床に落ちたフラスコの中の液体が白い煙をたてていた。フラスコに手をのばした和子は不思議な香りに包まれて気を失ってしまう。
和子は、保健室で気がつき自分を運んでくれたクラスメイトの堀川吾朗や深町一夫らと様子を見に行くが、実験室は何事もなかったように整然としていた。しかし、和子はあの不思議な香りだけは覚えていた。それはラベンダーの香りだった。


この事件があってから、和子は時間の感覚がデタラメになったような奇妙な感じに襲われるようになっていた。ある夜、地 震があり外に避難した和子は、吾朗の家の方で火の手があがっているのを見、あわてて駈けつける。幸い火事はボヤ程度で済んでおり、パジャマ姿で様子を見に 来ていた一夫と和子は一緒に帰った。
翌朝、寝坊をした和子は学校へ急いでいた。途中で吾朗と一緒になり地震のことを話していると突然、古い御堂の屋根瓦が くずれ落ちてきた。
気がつくと和子は自分のベッドの中にいた。夢だったのだ。その朝、学校で和子が吾朗に地震のことを話すと、地震などなかったと言う。


そして授業が始まり、和子は愕然とした。昨日と全く同じ内容なのである。やはりその夜、地震が起こり火事騒ぎがあった。和子は一夫に今まで起った不思議なことを打ち明けるが、一夫は一時的な超能力だと慰める。
しかし、納得のいかない和子は、一夫を探していて、彼の家の温室でラベンダーの香りをかぎ、気を失った。
気がつくと和子は、一夫が植物採集をしている海辺の崖にテレポートしていた。そこで和子は不思議なことが起るきっかけとなった土曜日の実験室に戻りたいと言う。
一夫は反対したが和子のひたむきさにうたれ、二人は強く念じた。


そして、時をかけた和子が実験室の扉を開けると、そこには一夫がいた。彼は自分が西暦2660年の薬学博士で、植物を手に入れるためこの時代にやって来たこと、自分に関わりのある存在には、強い念波を相手に送って都合のいい記憶を持 たせていたことを告白する。そしてすべてを喋ってしまったのでお別れだと告げた。
和子は一緒に行きたいと言うが、彼は自分に対しての記憶も消さなくてはならないと言う。和子は嫌がるが、ラベンダーの香りをかがされ床に崩れた。


11年後、大学の薬学部研究室に勤めている和子は、実験室を訪ねてきた一夫とぶつかる。二人はハッと思うがそのまま歩み去るのだった。
時をかける少女(1983)(1983) - goo 映画

大林宣彦の面目躍如のような映像が、頻出している。そのあたりが、評価の分かれ目になると思う。
本作は脚本がしっかりしているので、一部の大林作品とは異なり、個人的には、現在でも十分に見応えがあった。


やはり本作の一番のチャームポイントは、この当時、10代であった原田知世の旬の魅力を見事に引き出している点にある。
確かに、彼女の演技は(この当時)まだまだ未熟。
そして、相手役の高柳良一はその後俳優を辞めたのは正解といえる演技。
かえって、尾美としのりの上手さを引き立ててしまった(苦笑)


それに教師役の岸辺一徳さん。演技が、まだかわいらしい(笑)
90年代以降の演技は、この当時から一皮も二皮もむけていることがよくわかる。
でも、これはこれでいい味だなあ。


本作を改めて観て、映画は俳優の演技がまずくても、脚本と演出と編集がしっかりしていたら名作になる、という感想を抱いた次第だ(笑)