モラル・ハザード (カドカワエンタテインメント)伊野上 裕伸 (著)

モラル・ハザード

内容(「BOOK」データベースより)
どんでん返しにつぐどんでん返し!裏切りにつぐ裏切り!保険金を手に入れるのは誰なのか?保険金詐欺の常習犯・滝村隆次が目をつけた高額商品“法人役員総合保証保険”。最後の大勝負として立てた詐欺計画は、抜かりなく進行しているはずだったが…。
実際に保険調査業務の経験を持つ著者が、保険制度の盲点を突く犯罪と、金に群がる悪人たちの戦いを、リアルに描いた、エンタテインメント大作!クライム・サスペンス。

著者の略歴を見てわかるように、損保についての知識は現場にいた人間のそれを感じさせる。それが、本作を生き生きとしたものに仕上げる原因だ。

読み始めて一気呵成に読了した。
主人公・滝村は、確かに悪人だ。が、保険会社・日本大使館員・タイ国警察が善人であるのか?
「否」である。カネ・社会的信用がかかわると、何が正義で何が悪であるのか、グレーゾーンは
広がる。
滝村のつぶやき「なめるんじゃねえ、悪いが、俺には俺の正義があるんだ」は印象に残る言葉だ。
生半可な「正義」とか「良心」を吹き飛ばしてしまう作品だ。

◆著者略歴◆
1938年、大阪府生まれ。国学院大学日本文学科卒業。高校講師、興信所調査員等を経て、
1975年から損害保険調査会社に勤務。以来20年にわたり、三浦和義事件をはじめ、交通
事故調査、医療調査、火災調査など数多くの保険調査を手掛けた。「赤い血の流れの果て」
で第33回オール読物推理新人賞を受賞。初の長編である「火の壁」で第13回サントリーミス
テリー大賞読者賞を受賞した。
http://homepage2.nifty.com/kamex/book/sakka/ni13.html