「青いパパイヤの香り」  監督/トラン・アン・ユン (フランス・ベトナム)

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先日、深夜に字幕付きで放映されたもの。たいした予備知識もなく、何となく気になり録画しておいたが、大正解であった。


およそ半世紀程前のサイゴンを舞台にしている。が、ベトナム内戦の匂いはうっすらとするのみで、ボクが思い描いていた「ベトナム」とはちがった顔を見せてくれる。

パリ郊外のセットの中で在仏ベトナム人監督やスタッフたちによって再現されたサイゴンで、一人の女性の生涯を淡々としたリズムで語った一編。監督のトラン・アン・ユンは幼い頃フランスに移住し、リヨンの映画学校を卒業。本作品ではカンヌ国際映画祭で新人監督賞を獲得し、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。製作はアアドリーヌ・ルカリエとアラン・ロッカ、エグゼクティヴ・プロデューサーはクリストフ・ロシニョン。撮影・照明はブノワ・ドゥローム、録音はミシェル・ギファン、美術はアラン・ネーグルが担当。出演は、幼いムイに、リュ・マン・サン、成熟したムイにはトラン・ヌー・イェン・ケーが当っている。ムイを雇う一家の母にトルゥオン・チー・ロック、父にトラン・ゴック・トゥルン、年老いた女中ティーにグエン・アン・ホア、そしてムイの憧れの対象クェンにヴォン・ホア・ホイが扮している。ほとんどの俳優がフランス在住のベトナム人で映画初出演。

                  <goo 映画 解説より

青いパパイヤの香り(1993) - goo 映画
青いパパイヤの香り(1993) - goo 映画

                                
フランス在住のベトナム人監督の描く祖国へのオマージュが映像化されているような印象。とにかく、美術品に目を惹かれる。加えて、料理にも。
まるで、小津安二郎の影響を受けたような映像である。

<あらすじ>
1951年のサイゴン。田舎の実家から奉公に出された10歳の娘ムイは、布地屋の召使いとして、食事の世話や雑用を任されていた。そんなある日、たまたま遊びに来ていた長男の友達クェンにほのかな恋心を抱くムイ。やがて10年の歳月が流れ、奉公先の布地屋から暇を出されたムイは、今度はクェンの家に奉公することになるのだが…。

                   <NTT-X Store より

'50-'60年代の「ベトナム=内戦」というステロタイプは、打ち砕かれる。誰もが連想する"飛び交う砲弾、硝煙地獄"といったイメージは微塵もない。ここにあるのは、社会主義以前の古き良きベトナムだ。

とにかく台詞が少ない。その分、表情や仕草や衣装を含めた小道具で感情や場面を説明している。
また、その表情や仕草に懐かしさを感じるのはどうしてなのだろうか?


雨のシーンでのショパンが効果的に使われている。その映像、かなり目に焼き付いた。


ベトナムは、朝鮮半島や日本列島同様、漢字文化圏である。儒教の影響は、おそらく日本の比ではあるまい。映像を観ていてそんなことも感じた。


これが、「ベトナム」だなどとは思わないが、ちがった側面を見ることが出来た。