『大船日記−小津安二郎先生の思い出−』(扶桑社) 笠智衆

先日購入して、他の本と併読していたため遅れましたが、昨夜で読了。
小津安二郎関連の書籍は多数出版されているので、本書に記されていることは取り立てて目新しいエピソードはない。しかし、小津に対する尊敬の念が、小津死後も変わらぬままでいるところに笠智衆の人柄が偲ばれ、この点が本書の最大の魅力である。


以下の一節に、小津に対する思いが凝縮されているのではないだろうか。

(『晩春』のラストで監督より「慟哭してくれ」と言われたことについて)
僕はできませんでした。やってみる前から、できないことはわかっていました。<中略>先生は、無理にやらそうとはされませんでした。ご自身も迷っておられたのかもしれません。<中略>今考えると、やるべきだったと思います。できるできんは別にして、とにかくやってみるべきでした。監督の言われたことは、どんなことでもやるのが、俳優の仕事なのです。【p.68】

このように、小津監督に対する敬愛の情は半端ではなかった。


また、小津監督以外の映画人と笠智衆の交流話も興味深い。特に、清水宏監督に対しては、「オヤジ」と呼んで、小津に対するものとは違う敬愛の情を示している。本書の趣旨とは異なるが、個人的には、清水監督の作品を観たくなった。

映画読本・清水宏―即興するポエジー、蘇る「超映画伝説」

映画読本・清水宏―即興するポエジー、蘇る「超映画伝説」

↑のような書籍が出版されている。知らなかった〜(苦笑)