「わらの男」('58 伊)

ピエトロ・ジェルミが監督・脚本・主演を務める。

わらの男 (トールケース) [DVD]

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ピエトロ・ジェルミときたら、長年「鉄道員」と条件反射のようになっていた。でも、それだけではない。本作「わらの男」を忘れてはいけない。

あらすじ
ローマに住む機械熟練工アンドレア(ピエトロ・ジェルミ)には、妻のルイザ(ルイザ・デラ・ノーチェ)との間に八歳の一人息子のジュリオがあった。日曜日に狩りにつれて行って雨に当ったことから、ジュリオが肺炎をおこし、その療養のためにルイザはジュリオをつれて田舎の実家に帰った。妻と子のいなくなったアパー卜で一人暮すようになったアンドレアの生活は、何か空虚だった。日曜ごとに海に近い田舎の実家を訪れることで、彼は自分の心をなぐさめた。そんなある曇った日曜日、実家近くの海岸で、彼はふと何か淋し気な一人の女に出会った。町に帰るバスの中でも彼女といっしょになって、アンドレアは彼女に話しかけた。その女、リータ(フランカ・ベットーヤ)は、アンドレアの向いのアパートに住むビジネス・ガールだった。リータの弟を自分の務める工場に入れるよう計らってやったりして、二人はよく会った。お互に離れられなくなるのを知りながら。そしてある晩、残業で一人タイプを打つリータのオフィスにアンドレアが訪れた夜、二人は結ばれた。だが、やがて全快したジュリオと妻が、アパートに帰って来る日がやってきた。こうなるとは解ってはいたものの、リータはアンドレアと別れ難かった。なるべく彼女を忘れようとするアンドレアを、リータは郊外のカフェに呼び出したりした。最後にもう一度会ってくれというリータの電話に、アンドレアは散歩をよそおって出かけた。その後をジュリオ少年と愛犬が追った。父親のあとから少年が声をかけて走りだした時、愛犬がトラックの車輪にかけられた。泣き叫ぶ少年の姿とアンドレアを見て、リータは自分と彼の関係が終ったのを悟った。クリスマスも近いある晩、リータはアパートのバルコニーから身を投げて死んだ。苦しみに耐えられず、アンドレアは、リータの死の原因が自分にあることを教会で妻に告白した。妻はジュリオをつれてアパートを去り、田舎に帰った。年の瀬を迎えて、アンドレアは酒に酔いしれた。親友べッペのなぐさめも空しかった。新年を迎えて町中が花火でさわぐ夜、アンドレアは打ちひしがれたように一人アパートの階段を上った。アパートの部屋に、妻と子は帰っていた。三人は抱きあった。しかし、夫と妻は、今や自分たちの間から、一番大切なものが失われてしまったことを知るのだった。
goo映画 より

妻子ある中年男と若いOLの不倫、と書いてしまえば、そこいらに転がっている下らないTVドラマでも使い回されるテーマである。しかし、本作には人間の内奥にまで踏み込んだドラマが展開される。それが約半世紀前の映画であるのに、未だに色あせない理由なのだろう。また、サーロ・ウルツィの名脇役ぶりが光っている。ジェルミ作品には、不可欠な役者だ。


この映画の男はどこまでいっても「情けない」。女はある意味「強靱」。ラストシーン、妻の独白でそう感じた。


どう受けとめるかは、個人の感性によるのだか…。


大人の方々にお勧めです。