「野獣死すべし」'80 村川透/監督  大藪春彦/原作

野獣死すべし [DVD]
松田優作・主演のバイオレンス映画。ボクは、「仁義なき…」の類の映画は嫌悪している。日本映画=ヤクザ映画 というのがイヤなのだ。ヤクザが登場する映画はあってもいい。でも、意味もなく賛美するのは「お断り」! ヤクザに限らず、戦争物に関しても同様だ。三文芝居にも劣る、と個人的には思っている。


そこで、この映画だ。まず、松田優作の演技が、群を抜いて素晴らしい。言い換えると、松田以外の役者が演じても様にならないのでは?と思ってしまう。それほど、特異な演技だ。見方は、いろいろあるが、今見ると、バイオレンスを装った「反戦映画」と解釈できるのでは?

あらすじ

ある夜、警視庁捜査一課の岡田警部補が殺害され、拳銃が奪われた。数日後、秘密賭博場が襲われ、暴力団三人が射殺され、テラ銭三千万円が奪われた。使われた拳銃は奪われたものだった。

伊達邦彦は、通信社のカメラマンとして、アンゴラレバノンウガンダなど血と硝煙の戦場を渡り歩き、帰国して退社した今、翻訳の仕事をしている。戦場でめざめた野獣の血、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳の持ち主だ。

岡田警部補の部下だった柏木は、執念深く事件を追い、長身、ガッチリとし体の男という容疑者像を割り出した。そして、伊達の尾行を始める。柏木の尾行をよそに、伊達はコンサート会場で華田令子に接近したり、優雅な日々を送っている。

暫くして、伊達は次の行動に移った。高級宝石店の店員を支払いをするからと銀行に呼び出した。店員が預金カウンターに近づくと、伊達は係の男に、前にいる男に金を渡せと電話をした。係員の防犯の合言葉で、何も知らない宝石店の男は、組み伏せられ、一分三十秒後にパトカーが到着した。これは銀行の防犯体勢を調べる伊達の実験だ。

大学の同窓会に出席した伊達は、そこで、自分と同じ野獣の血を感じた真田と出会い、彼を仲間に入れる。伊豆山中での拳銃の練習。真田はアッという間に腕を上げた。同行した恋人、雪絵が邪魔になった真田は、伊達に促され動く標的として、彼女に銃口を向けた。

銀行襲撃は決行された。巧妙に逃走する伊達と真田。追う柏木。銀行に居合わせた令子も射殺して、伊達は野獣のみちを突き進んでいく……。

野獣死すべし(1980)(1980) - goo 映画

「戦場でめざめた野獣の血」とは、特殊なもので彼岸と此岸ほどの違いが、あるのだろうか? ボクの考えは「否」である。ある環境に置かれたならば、誰しもが陥るところではないだろうか?
半世紀以上前の中国大陸の日本軍。ベトナムでのアメリカ軍。サラエボでの紛争。イラクでのアメリカ軍。 ボクには、平和な社会でおこれば大犯罪だが、戦場ではもちろん犯罪ではあるが不問に付されることも多々あるのでは、と勘ぐってしまう。


繰り返すが、「狂気」へ変わる松田の演技は出色。でも、これは戦場という日常では誰にでも起こりうる「狂気」だろう。 
戦場に赴くことを「国の威信」や「国民の義務」と確信している勇敢な10代・20代の方々に、じっくり観ていただきたい映画だ。

久しぶりに「タクシードライバー」を観てみたくなった。
タクシードライバー 〔SUPERBIT(TM)〕 [DVD]