「真昼の決闘」'52 フレッド・ジンネマン/監督 ジョン・W・カニンガム/原作

カール・フォアマン/脚本(アカデミー賞の主演男優賞、編集賞、劇映画音楽賞、歌曲賞の4部門受賞)

真昼の決闘 [DVD]

「西部劇の革命とさえ言われた名作」と解説に書かれている。なるほど、いわゆる単純な西部劇ではない。


tougyouさんが、以前ブログhttp://d.hatena.ne.jp/tougyou/20061225で触れられていたが、アメリカの最高権力者と日本の前・最高権力者は、この映画がお好きのよう、とのこと。また、監督・ハワード・ホークス、主演・ジョン・ウェインの『リオ・ブラボー』('59)製作との関連や、ハリウッドの「赤狩り」との関連。本編の裏側に横たわるものに、思いをはせながら観るのも、面白い。


息子・ブッシュ大統領や小泉前総理が、この映画のファンだというのは、誠に皮肉が効いて、まさにブラック・ユーモアだ。

あらすじ
1870年、西部のハドリーヴィルの町、ある日曜日の午前のことである。この町の保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)は、事務所でエミイ(グレイス・ケリー)と結婚式を挙げていた。彼は結婚と同時に保安官の職を辞し、他の町へ向かうことになっていた。突然、そこへ電報が届いた。ウィルが5年前に逮捕して送獄した無頼漢フランク・ミラーが、保釈されて正午到着の汽車でこの町に着くという知らせだった。停車場にはミラーの弟ベンが仲間の2人と、到着を待っていた。時計は10時40分。ウィルは再び保安官のバッジを胸につけた。エミイはウィルに責任はないと言って、共に町を去ろうと主張したが、彼は聞き入れなかった。エミイはひとり正午の汽車で発つ決心をし、ホテルで汽車を待つ間、ウィルのもとの恋人で、今保安官補ハーヴェイ・ベル(ロイド・ブリッジス)と同棲しているメキシコ女ヘレン・ラミレス(ケティ・フラドー)と会い、彼女も同じ汽車で町を去ることを知った。一方、ウィルは無法者たちと戦うため、助勢を求めて、酒場や教会を訪れ、最後に2人の親友に頼み込むが、みんな尻ごみして力になってくれない。彼は1人で立ち向かう決心をして遺言状を書きつづった。時計が12時を指すと共に汽笛がきこえた。停車場からミラーが降り立ち、入れ替わりにエミイとヘレンが乗った。エミイは一発の銃声を聞くといたたまれず汽車から降り、町へ走った。ウィルは2人を仆し、エミイの機転であとの2人も射殺した。戦い終わって町の人々がおそるおそる集まってくるうちをウィルとエミイは黙ったまま馬車を駆って去って行った。

真昼の決闘(1952) - goo 映画


単純な西部劇とは、〔悪と正義の対立→決闘シーン→主人公ピンチ→起死回生の逆転劇→悪役敗れる→町に平和が戻る〕というのがおおよそな物語の展開だろう。 
「主人公ピンチ」以降は、本映画もほぼ同様。でも、決闘シーンに至るまでの展開が、一種の心理劇になっている。正義を優先するか、我が身が大事か、選択如何によって我が命運が決まるとなれば、奇麗事ですまないのが人間の常だ。


その点を実にリアルに描いている。この映画の見所は、決闘シーンにあらず、そこに至るまでの人々の行動だ。最後に、保安官バッジを地に叩きつけ町を出ていくところに、監督の強い思いを感じる。


↓に面白い、制作の裏話が記されている。
http://www.geocities.jp/h2o_classic/index.html