宮廷料理人ヴァテール'00  ローランド・ジョフィ/監督・製作

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金曜深夜というか、土曜未明にMBSで放映。日本語吹き替えなのが、やや残念。深夜の映画は、字幕スーパーでノーカット版がどう考えても、望ましい。

フランス映画史上空前の40億円の制作費を投じ、2000年カンヌ国際映画祭オープニング作品として上映され世界を唸らせた。


この映画を楽しむために、絶対王制から市民革命の最低限の歴史を知らないと面白さは、半減するだろう。
まあ言うなれば、キリシタン迫害と大名改易の歴史を知らなければ、島原の乱を扱った映画も楽しさ半減、と同じであろう。
映画製作の難しいところは、そこんとこがわかんなくても面白くしなければならないことだ。

 物語は1671年4月22日、ルイ14世が隆盛を極めていく頃のフランス。コンデ大公は、国王ルイ14世の信頼を取り戻そうと腐心している。そのために、コンデは大公家の命運をヴァテールの手に委ねることにし、シャンティイにあるコンデ家の城にヴェルサイユ宮の500人を超える廷臣全員を招いて接待するという重責を担わせる。3日3晩を通しての饗宴、しかもそれは至高のきらびやかな宴でなくてはならないのだ。ヴァテールは国王を魅了し驚嘆・満足してもらおうと、3日間の祝宴にそれぞれテーマをつくった。
 
    初日は"太陽の栄光"、2日目は"水の饗宴"、3日目は"氷の饗宴"だ。ヴァテールはテーマ毎に祝祭をデザインし、念入りな究極メニューと国王が夢中になっているバレエ、オペラ、芝居といった大掛かりなショーを準備した。1日目の夜、ヴァテールを魅了するのが国王妃の女官、アンヌ・ド・モントージエ。アンヌもヴァテールに想いを寄せるが、それはこの華々しい饗宴を司る彼が、平民の出にもかかわらず、何よりも信念と真心の人だったからに他ならない。ところがその夜彼女は国王の夜伽きを命ぜられる。2日目の宴の素晴らしさに国王はヴァテールを天才だと絶賛し、コンデ公とのゲームでヴァテールを賭けさせ、思い通りにヴェルサイユの宮廷料理人として召し抱えることに成功する。しかし、ヴァテールは忠誠を誓うコンデ大公に我が身を売られたことに深く悲しむ。さらに、3日目の朝、晩餐の材料となる魚が届かず、完璧な料理を出せないことに絶望し、自らの運命を決意する。
http://www.tv-tokyo.co.jp/telecine/cinema/vatel/story.html


本作は、主人公の苦悩と破綻による結末も、歴史の流れを知ることでより面白さが増す。つまり、絶対王制絶頂期のフランスにあって、権力の近くにいなければたとえ貴族であっても苦渋の日々を過ごすことになること。平民に対する扱い方で、百数十年後のフランス革命を予想しうること。
また、オランダとのいざこざが映画でも描かれていた。ルイ14世の対外拡張政策により、治世末期には王室財政が悪化したことは、歴史的事実である。


権力に対する、ヴァテールの嫌悪感は、その後、民衆の嫌悪感と重なることを暗示しているのかもしれない。


とにかく豪華な映画である。王制に対する、批判はいったん置いて、豪華な宴の情景をたのしめる。ただ、その裏で犠牲者がでたり、貴族の嫌がらせがあったりで、支配される側の悲哀も忘れられない。


また彼についての研究書も出ている。『ヴァテル―謎の男、そして美食の誕生 (単行本)』<ドミニク ミッシェル (著), Dominique Michel (原著), 藤田 真利子>という本だ。
ヴァテル―謎の男、そして美食の誕生