原爆が心に残す傷跡

以前、映画館での予告で堺正章が広島の町を歩いているシーンを見た。それは、映画『夕凪の街 桜の国』(佐々部清監督)だ。


原作は、こうの史代さんの漫画作品。文化庁メディア芸術マンガ部門大賞・手塚治虫文化賞新生賞を受賞。
原爆投下から13年が経過した広島で暮らす皆実(麻生久美子)と、半世紀後の現代を生きる皆実の姪、七波(田中麗奈)の紡ぎ出す物語。
映画は、前編=「夕凪の街」 後編=「桜の国」に別れている。いわゆる派手さのない映画であるが、確実に、戦争とは、家族とは、と観るものに語りかけてくる作品のようである。
試写を鑑賞した方のサイトで感想を読むと共通しているのは、心に「ガーン」ではなく「ジーン」と響いてくるとのこと。
 

この監督さんは、人間魚雷・回天に乗る若者を描いた『出口のない海』の監督でもある。
人間魚雷は、もしあの戦争がもう1週間か10日続いたら、我が亡き親父殿も乗ることになっていた。
生前、その話は何度か聞いた。「国のためとは分かっていても、志願するときは手が震えた」と。まともにペンが握れないほど手が震えたそうである。
親父殿は、学歴がなく、予科練に合格したときも周囲が驚いたそうである。「国のため」に命を捨てる覚悟で海軍に入隊したが、敗戦直後の上級士官連の行動にずいぶん失望していたようだ。
大した思想的背景はなかったが、戦後は一貫して、軍人が威張り散らすようになったら大変だ、と言っていたなあ。
逝ってから、もう15年近く経つ。糖尿なのに甘いものに目がなく、禁煙のできなかった情けない親父殿であったが、「国のために戦争に行ったら、大変な目にあった」という言葉は、確実にボクの中に残っている。


レアな話を聞いているせいか、特攻隊の話を美しく描こうとする映画は「苦手」と言うより、「嫌悪」である。


公開は、次週(7/28)から。内容の詳細は、夕凪の街 桜の国オフィシャルブログをご覧ください。


よって、本日は『硫黄島2部作』を観てきまーす。2本立てだから、久々に「あんパン+牛乳」での鑑賞かな。