『オリヲン座からの招待状』三枝健起/監督 浅田次郎/原作 いながききよたか/脚本



本年11月3日公開予定の『オリヲン座からの招待状』試写会に行って参りました。
京都、西陣の映画館「オリヲン座」を舞台にした物語。

【Story】

「突然ではございますが、昭和25年の開館以来半世紀以上にわたって地元の皆様に愛され親しまれて参りましたオリヲン座は、誠に勝手ながら今秋をもちまして閉館いたす事と相成りました」
そんな招待状が、ゆかりの人々の元へ送られてくる。
昭和30年代、先代の館主・豊田松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、その弟子であった留吉(加瀬亮)が、その志を引き継ぎ先代の妻・トヨ(宮沢りえ)と映画館を守る事となった。古い時代、周囲の人々からは師匠のかみさんを寝取った若主人、不義理な女将などと陰口を叩かれたりもした。
さらには映画産業が斜陽になり始め、貧乏に耐えながらもひたすら映画を愛し、映画の灯を灯し続けたふたり、そして何よりも純粋にお互いを思いやり、愛し続けたのだった。
一方そんなオリヲン座を一番の遊び場としていた幼い子供がいた。ふたりは毎日映写室の小窓から名画を覗いて成長した。やがて大人になり、結婚して東京で生活を送っていたが、いつしかお互いを思いやる心を見失い、別れを決意していた。そんな祐次(田口トモロヲ)と良枝(樋口可南子)の元に、まるで何かを予感させる様に、一通の招待状が届くのだった。
オリヲン座、そこは優しい奇蹟の宿る場所
東映 映画ラインナップ オリヲン座からの招待状 より

賀茂川のよく見る景色がしばしば登場。それと京都の昔の雰囲気をよく出しているようだ。(昭和30年代は東京在だったので断定不可)
なんかそれだけで親しみを感じてしまう映画だ。


「オリヲン座」は名画座なので、『君の名は』とか『二十四の瞳』とか『無法松の一生』とか『幕末太陽伝』がワンシーンずつ流されてました。あと小津の作品(『東京物語』かも?これは自信ありません)もほんの少しだけ流れてました。
70年代後半から80年代半ばにかけて、名画座通いを思い出します。小津や黒澤の作品に馴染んだのも名画座でしたから。特に、売店のあんパンが懐かしい。ボクは、あんパン&白牛乳が名画座鑑賞定番の「おやつ」でした(笑)


ただねえ、へそ曲がりかも知れませんが、京都の景色があるからこそ、感じることがあります。
西陣から賀茂川って自転車ならともかく−実際、自転車で移動してます−、歩くのはどうかなあ。それも映画終盤で病院から妻(中原ひとみ)を背負って夫(原田良雄)が、「オリヲン座」まで歩いて戻るシーンは、どうもいけない。
時代設定は現代。やはりタクシーに乗るでしょう。京都・西陣って、はっきり実在の地名を出しているのだから、地元の人間に「?」と思われるようなことは、して欲しくないなあ(苦笑)


映画の効果として、二人の心的距離が縮まった象徴として、賀茂川から西陣まで「おんぶ」のシーンがあったから、二人の変わらぬ愛情を示唆するものとして挿入したのかも知れないが、個人的には「ウーーム?」であった。


宮沢りえさん、いい女優になりましたね。ただ、少しやせすぎかな?だからというわけではないけど、身体の露出が少ない浴衣姿がとてもチャーミングでした。不謹慎かも知れないけど、喪服姿もよかった!


どぎつい表現も不必要な暴力シーンもなく、淡々とした中にひっそりとした愛情を流し込んで、映画全体がやさしく覆われている。まあ、京都の地理に不案内なら、ボクの感じるような不自然さは感じないと思います(苦笑)


それと、音楽が画面の邪魔をせず、でも心に響いてきます。音楽は、上原ひとみ。ジャズ畑の人ですが、音楽のジャンルは関係ないです。いい音楽、その一言です。



宣伝するわけではないけど、この映画のオフィシャル・サイトはこちらです。