『成瀬巳喜男と映画の中の女優たち』(ぴあ)

成瀬巳喜男と映画の中の女優たち

成瀬巳喜男監督生誕100年記念。成瀬映画は、女優たちの映画である。高峰秀子原節子山田五十鈴ら、名匠の名作を彩った日本映画の名花たち39人。蔵出しスチール400枚、作品一覧、解説、ポスター等で綴る名匠の世界。

上記の記事にも書いた本です。「蔵出しスチール400枚」は圧巻。見ているだけでも楽しい本。
成瀬は生涯に89本の作品を残した。
昭和の女たちをとり続けた成瀬。彼の作品に登場した主な女優のスチール満載で、高峰秀子原節子田中絹代の写真が多いのは出演作に比例して、ということか。


吉田喜重の「小津論」と「成瀬論」は、なかなか面白い。両監督の共通点は「声を潜めた映画」(これは小津の表現)とし、その意味を「観客自身が映し出されるスクリーンに、自分の想像力によって、自由に映画を見る」としている。また、違いは人間を見る視点と映像についてのアプローチとしている。


吉田喜重によれば、
成瀬は、人間の別離を生涯テーマとし、それを女性の視点をもって描く。
小津は、人間関係を対等のものと捉え、揺れ動く対等関係が人間のありようとしている。



なお、かれは、成瀬作品を否定しないとしつつ、作品に描かれた女性像を「男の視点から求められた女性像」としている。この点に関しては、いろいろと反論もあると思う。
ボク自身、女性像に関する見解には、同意できない。が、もう少し考えをまとめてから書くことにする。
成瀬巳喜男に関心のある方、もしくは日本映画をよく観てきた方にお薦めの本である。