『遊びの時間は終わらない』'91 萩庭貞明/監督 都井邦彦/原作 斉藤ひろし/脚本

遊びの時間は終らない [DVD]


関西ローカルで、深夜放映。予備知識もなく観たのだが、これが思った以上に楽しめる作品であった。
主演は、本木雅弘。第1回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞受賞。
周防正行監督『シコふんじゃった』にも同年主演。本木にとっては、まさに当たり年であった。
彼は、酷い作品にも出演しているが、脚本がよくできていると、本当に輝く俳優である。

ある日、警察は国民のイメージ上昇を狙って筋書きの無い防犯訓練を行うことにした。しかし銀行強盗役に選ばれた警官・平田(本木雅弘)は、まじめで全く融通のきかない性格だった。彼は大真面目に強盗計画を立案して犯人役を遂行。すばやく平田を検挙するはずだった警官がドジを踏んで平田の持つモデルガンで撃たれ死人扱いとなってしまったことから、人質とともに銀行に篭城する破目に陥る。しかもこのことが、お祭り志向のディレクター(萩原流行)によってテレビ中継されることになってしまい、銀行の前には大量の野次馬が殺到。適当に落ちをつけてなんとか穏当に訓練を終わらせようとする警察の意図は次々とくじかれ、防犯訓練は前代未聞の先が読めない展開となってしまった。誰がどうやって幕を引くのか・・・
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コメディは演じる者が真剣であればあるほど、面白さを増すと教えてくれる作品だ。安直なギャグやアドリブ的な演技よりも緻密に計算されたものの方が、色あせない。アドリブは、一発勝負の舞台のような観客との一体感を味わえる場面ならいいのだろうが、映画でそれをやられると観ていて気持ちが冷めてくる。


主演の本木は「まじめで全く融通のきかない性格」を見事に演じており、まさに公務員のある種の典型。その人が銀行強盗役を真面目に演じる。上司やキャリア組は、適当なところで収めようとするのだが……。


この作品は真面目にコメディに取り組んで、権力者側の愚かさを笑い飛ばそうとしている。
また、訓練に対する、キャリア組とノンキャリア組の微妙な温度差が面白い。
その面白さは、ストーリーだけでなく細部にまで注意を払っている点にあるといえる。その結果、15年以上経過しても作品を古臭くさせていない。


監督の萩庭貞明は、『難波金融伝 ミナミの帝王』も撮っている。このシリーズは、土曜日午後にTVでよく再放送されている。正直、暇つぶしに見る程度の作品としか感じられないのだが……(苦笑)