『雪の断章 情熱』’85 相米慎二/監督 佐々木丸美/原作 田中陽造/脚本


雪の断章-情熱- [VHS]

またまた相米作品でございます(笑)
久しぶりに鑑賞。意識して初めて劇場で鑑賞した思い出の相米慎二作品です。
(それ以前に、『セーラー服と……』は見たのですが……)
斉藤由貴の初主演映画。彼女は、(当時)東宝が売り出していたアイドルでした。
‘80年代、世はまさにアイドル全盛期。聖子に明菜にキョンキョンに、石野真子石川ひとみ石川秀美南野陽子早見優松本伊代堀ちえみ薬師丸ひろ子、加えておニャン子クラブなどなど。それに、ジャニーズの男の子が加わる。


そして、当然、TVではアイドル番組が流れ、観客動員が見込めるのでアイドル映画も量産されていた、と記憶している。

<あらすじ>
広瀬雄一は、7歳の少女伊織と出会い、彼女を自分のアパートへ連れ帰った。みなし児だった伊織は、那波家にひきとられたが、ひどいこき使われ方をされていた。人間不信に陥っていた彼女を、雄一はひきとるため那波家を訪ねる。
東京に家のある雄一は、仕事で札幌に赴任しており、彼の面倒は家政婦のカネが見ていた。カネは反対するが、親友、津島大介の励ましもあって、雄一は伊織を育てる決心をする。


十年の歳月がたち、伊織は 17歳。雄一は伊織に北大を受けさせようとしていた。彼女の高校には、同じく北大を受けようとする那波家の次女、佐智子もいた。そして伊織の住む雄一のアパートに、那波家の長女、裕子が引っ越して来た。裕子の歓迎会がアパートの住人たちによって開かれ、見事な舞踊をみせた彼女は、一たん自室へ引きあげた。伊織がコーヒーを運び、再び裕子の部屋を訪れた時、裕子は死んでいた。青酸で殺されたことが検証され、伊織は重要容疑者として刑事の吉岡につきまとわれる。自室を警察に荒らされ、またカネから、雄一は伊織がひとりの女として成長する時を待っていると言われ、伊織は二重のショックを受ける。


そして、雄一に “偽善者"という言葉を吐いてしまう。雄一のフィアンセだという細野恵子がアパートを訪れた。恵子は伊織が結婚の障害になっていると告げる。
大介の誕生日が来た。大介の部屋に、彼に内緒で花束を持ち込んだ伊織が見たものは、殺人事件の真相をうかびあがらせた。伊織は家出し、尾行していた吉岡に補導された。彼女は真犯人を知っていると告げる。
迎えに来た雄一は、北大だけは受験しろと言う。大介が伊織を函館へ誘い出した。函館は故郷であり、自分もみなし児であったことを告白する大介。


春、伊織は北大に合格した。博多転勤となった大介は、伊織について来てくれと言う。伊織は頷いた。大介が九州へ発つ前日、吉岡が現われ、一生容疑者として汚名を背負って生きる伊織に、真犯人を告白するよう忠告した。翌日、大介が服毒自殺をしたと知らせがはいった。遺書の中で、大介は彼の両親が裕子の父親がもとで自殺を計り、そのための犯行だと告白していた。また、雄一を頼って生きろと伊織に言い残していた。伊織は雄一のもとから出る決心をするが、引き止められる。そして、雄一と伊織はお互いの気持を確認しあうのだった。
雪の断章 情熱(1985) - goo 映画

上記のように、<あらすじ>を引用すると、たいした話ではないし、話の展開も唐突だったりで、平凡な作品というような印象を受ける。
大体、いい大人が、幼い少女を引き取り、成長してから、愛を交わす。となると、良く言うと、『源氏物語』の光源氏と若紫の関係、悪く言うと、ロリコン話をイメージしてしまう(苦笑)


断っておきますが、原作はいわゆるロリコン話などではありません。どちらかというと、ミステリー風味の純愛小説です。原作については、別に感想を書きます。


この話を撮り方によっては、もっと、ドロドロした場面があってもおかしくないのである。
しかし、目に見える部分は、概ねサラリとしたものである。


とにかく撮り方に特徴がある。長まわしで一つの場面に2つの異なった場所をいれたり、心模様を照明や波を効果的に使ったたり、観る者に強く訴えるものがある。


アイドル映画という縛りがあるからという説明も可能だが、相米慎二はその状況を上手に利用してドロドロとした人間の情念をサラリとした場面の中で見せているような印象を受ける。


それに斉藤由貴が良い。チャーミングなだけでなく、17・8歳にしか出せない情感というものを感じさせる。
この当時の斉藤由貴に図抜けた演技力があったわけではない。それは、TV「スケバン刑事」を見れば一目瞭然。
なのに、深く心に刻み込まれる演技をしている。
監督の演出によって、俳優は変わりうることを端的に証明しているようだ。