『雪の断章』(ブッキング) 佐々木丸美

雪の断章 (佐々木丸美コレクション)
相米慎二監督の同名作品の原作。映画のほうは、当時、新人アイドルだった斉藤由貴が主人公を演じる。


映画を先に観たので、すらすらと読めたのであるが、文体は主人公・飛鳥が一人称で語る部分が多い。
体裁は純愛小説にミステリーのテイストを加味したもの。決して、映画的な小説ではないように思った。
いわゆる「謎解き」を楽しむ小説ではなく、主人公・飛鳥と祐也の長きに渡る養育関係が、恋愛感情に変わっていく過程を味わう作品。
彼女の心の揺らぎや迷いに波長が合えば、小説世界に入り込んでいける。

養い先の家で惨い仕打ちを受け家を飛び出した孤児の飛鳥は、青年・祐也に助けられ彼の元で育てられる。育ての親である祐也への愛を、飛鳥はひそかに募らせていく。そしてある日、殺人事件が発生したことから飛鳥と祐也の運命は大きく動き出す・・・。情感溢れる筆致で少女の想いをみずみずしく描き 、北海道を中心に一大ブームを巻き起こした珠玉の名作。
復刊ドットコム

著者の処女作。正直、文章は十分に練れていない。だが、ひとつのテーマに向かって、しゃにむに進む力が、この小説を読ませてしまう。


この作品のエッセンスを取り出して、(当時の)アイドル・斉藤由貴を主人公とした映画に仕上げた相米慎二の手腕に、改めて感服した。