『鉄路の斗い』’45 ルネ・クレマン/監督&脚本

第一回カンヌ映画祭、グランプリと撮影賞を獲得した作品。
フランスの一地方でのレジスタンス運動をドキュメンタリー・タッチで描いた映画。
出演は、実際にレジスタンスにかかわった素人俳優ばかり。芝居ではなく、実体験に基づく再現フィルムのような印象を受ける。

<あらすじ>
一九四四年、フランスのある地方駅。機関区長アトスと助手カマルグを中心としてレジスタンスが組織された。ナチから追われる仲間は機関車の水槽に浸って脱走した。レポやパンフレットが輸送され、ロンドンへ情報が伝達された。あらゆる抵抗・妨害が仕組まれ、非合法の集会があちこちで持たれた。


そして最初のサボタアジュが決行された。主謀と見られた六人が捕えられ、銃殺された。仲間は機関車の汽笛を全部鳴らしてその死を弔った。
六月、連合軍がノルマンディに上陸して第二戦線が実現した。ドイツ軍輸送司令部は西部戦線へ向けて“アップェルケルン"と名付ける十二本の列車群を編成した。
アトスたちはこの輸送妨害を決意した。まず、迂回線が爆破され、ドイツ軍は抵抗組織“マキ"が待伏せる本線を使用しなければならなくなった。


アトスの命をうけたカマルグは機関車と貨車八輌を転覆させた。あわてて運ばれて来た三○トン起重機も転覆した。ドイツ軍は、装甲列車を先発として輸送列車を出発させた。“マキ"の攻撃は失敗に終った。
アトスらは装甲列車をやりすごし、先頭の輸送列車を谷底に転落させた。ドイツ軍はやむなく残りの十一本の列車群を電車線にひき入れたが、直ちに全線の電流が切られた。


ドイツ軍は再び機関車を要求した。しかし、レジスタンス命令によって全機関車の火は落された。動きを失ったアップェルケルンは連合軍の空爆によって炎上した。
ノルマンディ戦線は突破され、ドイツ軍は敗走した。解放のしらせに町は沸き立った。自由と解放の第一列車が明るい歌声をのせて出発していった。
鉄路の斗い(1945) - goo 映画

フランス映画総同盟とフランス国鉄の抵抗委員会の企画製作。
なにか教育映画とか広報映画の趣が、あるのでは?と懸念していたが、杞憂であった。


侵略軍からの解放の闘いを描いたにもかかわらず、イデオロギー臭や手前勝手な愛国心は感じられない。
大体、ドゴール将軍の名前も出てなかったような気がする。(記憶違いかもしれないが……)
それが、今なおこの映画を退屈せずに観られる要因だろう。


それに、ナチは、一部を除くフランス人にとって共通の敵だったのだろうから、イデオロギーや党派による反発もなかった、と想像できる。