『洲崎パラダイス 赤信号』'56 川島雄三/監督 芝木好子/原作 井手俊郎&寺田信義/脚本

洲崎パラダイス 赤信号 [DVD]

昨夜、川島雄三の番組をYouTubeで観た。非常に興味深い監督だ。
本日、午前中に我慢できなくなり本作を鑑賞(笑)


主演は、新珠三千代三橋達也。二人は、だらしない女と情けない男のカップルだ。

<あらすじ>
両親に結婚を反対されたため、連れ立って栃木から上京した義治と蔦枝は、どこへ行くアテもなく夕暮の浅草吾妻橋附近を歩いていた。
以前廓にいた好みで洲崎 遊廓へ入り込んだ蔦枝は、一杯のみ屋“千草"の女将お徳に二人の職探しを頼み、蔦枝はお徳の店で働くことになる。
義治の方も、千草に近いソバ屋で働くことになるが覇気のない彼は失敗続き。だが女店員の玉子はいつも義治をかばってくれた。


ある日、蔦枝は田舎へ送金したいからと義治に給料前借を頼むが、返事に渋る彼を歯がゆがり、千草の馴染客落合に頼み込む。当にしていた以上の融通を受けて落合に惚れ込んだ蔦枝は行方不明になった義治のことも意に介せず、落合 の探してくれたアパートに引越す。
その夜の千草も客の出入りは頻り。騙されて廓に連れ込まれた初江に惹かれ、以前から彼女を救おうと努める純情青年信夫 が、救出は無理だとしおれている処に義治が戻って来たが、蔦枝と落合の一件を聞き再び表へ飛び出す。
その時、ある女と駈落していたお徳の旦那伝七が現われ、喜んだお徳は玉子に留守を頼み揃って外出。


落合を探し疲れた義治が千草に戻ると、お徳から堅気な玉子と一緒になれと水を向けられ万更でもない。
或る夕刻、そろそろ落合にも飽きた蔦枝が義治に逢おうと千草に来る。
玉子のお蔭で堅気になろうとした義治も、これを聞いて叉心迷う。やがて、洲崎神社の境内で伝七が殺され、お徳は死体にすがって泣いた。
その晩、義治と鳶枝は遊廓を出、宛もなく永代橋の上から赤信号の方へ歩み去って行った。
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バスに乗り、立ち去る二人。決して、明るい未来が待っているような予感はしない。
せっかく立ち直りかけた義治も、蔦枝の誘いを受けると断れない。こんな調子では、また元の自堕落な生活になりそうだ。
ボクの個人的な好みでは、玉子役の芦川いづみの方がいいのだが……(笑)
川島雄三は、情け容赦なく、玉子の健気さを踏みにじる。これが現実とばかりに。


単に夢や理想を描くのではなく、どうしようもない人間のだらしなさ、いい加減さ、また、頭で分かっていても、情の部分では割り切れない。そんな人間の負の側面をカラッと描いている作品だ。


後味さわやかな作品ではない。
しかし、何でだろう?不快感はない。実は、2度鑑賞してしまった。
川島雄三の「毒」に冒されたか(笑)


また、昭和30年当時の秋葉原が映し出されている。
ラジオ商が大繁盛だったよう。TVはまだ「高嶺の花」だった頃だ。
そういえば、当時、我が家では、叔父一家共に暮らしていた。これ自体、もう戦後復興期の一断面だ。
それに、叔父が、後年、力道山の試合のTV中継を観るために我が親父殿と駅前の喫茶店に行った、と話していた。そんな頃の物語である。