「友がみな我よりえらく見える日は」(幻冬舎アウトロー文庫)上原隆

友がみな我よりえらく見える日は


beatleさんが紹介されていて何か惹かれるものを感じたので、手にしたところ。一気呵成に読破。
本の裏表紙に「読むとなぜか心が軽くあたたかになる、新しいタイプのノンフィクション。」とあるが
看板に偽りなし、である。内容自体は、決して明るいものでないのにもかかわらず…。

本書に登場する人物は、著名な人物はいない。芥川賞作家の東峰夫くらいである。後は、著者の友人
をはじめ無名のひとばかり。

容貌の?な中年女性,ホームレスの中年男,傾きかけた業種の職人,男運のない借金+子持ちのタクシ
ードライバー,そして妻に捨てられた男達。そこには、華麗な成功物語も一発大逆転の栄冠もない。
上原隆は、そんな彼らの身の上話や日常を乾いた文体でやさしく描く。そこに粘着質な関係はない。
だが、取材対象を突き放しているのでもない。あるのは淡々としたやさしい視線だ。

ちなみに書名は、石川啄木の短歌「友がみな我よりえらく見ゆる日よ花を買い来て妻としたしむ」から採ったもの。

この歌を反芻してみる。何とも言えぬ味わいがあるなあ。