『TUGUMI』(中央公論社)吉本ばなな

TUGUMU


映画(<出演>牧瀬里穂中嶋朋子)の方を先に見た。よって、感想といってもその先入観のため本をのみ読んだ方とは違ったものになってしまうだろう。


小説は、「まりあ」(「つぐみ」の従姉)の一人称の語りにより進められていく。


ひと夏の「つぐみ」と彼女を巡る人々の物語である。「つぐみ」は性格が悪い。確かに、一筋縄ではいかない性根を持っている。一度怒ると人殺しもしかねない非情さと激しさを兼ね備えている。そんな少女が時折見せる別の一面が、魅力的だ。


生まれつき体が弱くて「死」と隣り合わせで、生きて行くには「つぐみ」のような性格の悪さも必要になるのだろうか。とにかく悪さはしても、憎まれないのだ。それと、周囲の人間が何とも優しい。


ただ、映像以上には印象に残らない作品だ。病弱の少女「つぐみ」は「いやな女の子」ではあったが「美しかった」のだ。 その容姿についての記述があるが、'90年代初めの牧瀬里穂にドンピシャである。彼女の旬の輝きに小説の方が、一敗地にまみれているような…。


まあ、映画と小説は別のものだから、ある意味、全く違う作品として認識しておいた方がいいのだろう。


本書は、中学3年生の推薦図書として国語の教科書に掲載されている。