「誘惑されて棄てられて」ピエトロ・ジェルミ/監督・脚本

誘惑されて棄てられて (トールケース) [DVD]
ピエトロ・ジェルミは、出演してない。主演のサーロ・ウルツィが1964年カンヌ映画祭主演男優賞を獲得している。確かに、賞に恥じない熱演である。また、この当時、ステファニア・サンドレッリは清純な雰囲気でした。

あらすじ
ビンチェンツォ(サーロ・ウルツィ)の長女マチルデは、ペピーノ(アルド・プリージ)と婚約の間柄だった。
ある日ペピーノはマチルデの妹アネーゼ(ステファニア・サンドレッリ)を衝動的に暴力で誘惑してしまった。そして妊娠した。ビンチェンツォは激怒し、アネーゼの方と結婚することを約束させた。マチルデが世間の笑い者にならないように、一人の貧乏男爵を新しい婚約者にした。
ペピーノはアネーゼを嫌い、伯父の大司祭の許へ逃れた。ビンチェンツォは弁護士の徒弟を訪ね、法律上の意見を聞いたが家名を傷つけるばかりだった。ただ、突発的に相手を殺しても名誉を汚された理由で罪は軽いだろうとつけ加えられ、ビンチェンツォは息子アントニオにペピーノ殺害を命じた。これを知ったアネーゼは警察に知らせた。惨事は未然に防がれた。アントリオとペピーノは裁判所に送られ事件の審理が始まった。だが双方が誘惑したのは相手の方だと主張して審理は滅茶苦茶。あくまで世間態を気にするビンチェンツォの意に叶うため、ペピーノは掠奪結婚を思いついた。
両家の人達が勢揃いしての予審判事の前で、アネーゼは結婚はいやだと言った。大混乱になった。誰もがわめき、町の人々はあざけり罵った。ビンチェンツォは脳溢血で死んだ。
マチルデは男爵との婚約にも破れ、修道院に入った。町は平穏になるだろう。
                                    goo映画 より

コメディーということだが、ボクとしては今から半世紀近く前のイタリアの田舎のコミュニティの雰囲気を味わった、というのが第一の感想。


田舎なのに、エスプレッソやアイスクリームが美味しそうだ。イタリア映画とフランス映画での何か食べるシーンは、基本的に好きである。本作でも、家庭での食事に出てくるパスタが気になる。それにしても大盛りのパスタだ。
また、午睡を習慣にしている社会はうらやましい。


作品に登場する主な人物群を以下に記す。

アネーゼの気持ちよりも体面に心を砕くビンチェンツォ。
ペピーノの不誠実さに愛想が尽きてるのに、結局のところ結婚してしまうアネーゼ。
自分で誘惑しといて、「花嫁は処女でなければならない」とアネーゼを「淫売」よばわりする身勝手なペピーノ。
婚約破棄されて修道尼になってしまう事大主義のマチルデ。


ピエトロ・ジェルミは、この作品をコメディーの装いをしつつ、保守的な考えにがんじがらめになっている人間や社会を痛烈に皮肉っているようにいるような気がした。


1963年当時のシチリア島における社会通念には不案内だが、世間体というか体面というか、かつての日本社会と相通じるのではなかろうか。


【おまけの感想】イタリア男って、「女性を見たら口説く」というある種の先入観があったが、ペピーノを見てるとあながち的はずれではないと思ってしまう(笑) 堅物のイタリア男性もいるはずですよね。