書評

「雑草の生活」(新潮社)中嶋朋子

役者は、感性が勝負。そう思っている。著者は、子役時代−「北の国から」−から30代で1児の母となっても現役の女優として活躍している。彼女の感性は、本書を読めば明白だ。やはり常人とは違う。悪い意味ではなく、良い意味で「変人」だ。それが映画「つぐみ…

中学生向けの推薦図書

娘(中3)の国語の教科書をぱらぱらと眺めていたら、「見よう、読もう、楽しもう」という題で本の紹介のページがありました。 さてさて、どんな本を紹介してるのかと思い、読んでみる。 オッ、なかなかやるじゃないか!と思い、ついブログ上で紹介し、皆さん…

『大船日記−小津安二郎先生の思い出−』(扶桑社) 笠智衆

先日購入して、他の本と併読していたため遅れましたが、昨夜で読了。 小津安二郎関連の書籍は多数出版されているので、本書に記されていることは取り立てて目新しいエピソードはない。しかし、小津に対する尊敬の念が、小津死後も変わらぬままでいるところに…

「雨鶏」(ソニーマガジンズ)芦原すなお

雨鶏 (ヴィレッジブックスedge)作者: 芦原すなお出版社/メーカー: ソニーマガジンズ発売日: 2006/03メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る 内容(「BOOK」データベースより) 山越只明は田舎から上京してきて、大学の独文科―という…

「しろばんば」(新潮社)井上靖

思い出の一書というか、ボクが初めて自主的に読んだ文学作品である。今回、Blackbirdさんのコメントに触発されて30数年ぶりに再読した。中学時代とは、違う感想をもち−当たり前だ−、それでいて懐かしい思いに浸れた。 井上靖の自叙伝的な作品で、登場人物…

「にんげん蚤の市」(文春文庫) 高峰秀子

今更、説明を要しないほどの日本映画界の大女優である。杉村春子とは異なりある年齢でぱったり女優業から足を洗い、文筆業に転じた。 意外といっては失礼だが、彼女の文才はなかなかのもの。ちなみに「わたしの渡世日記」では、日本エッセイスト・クラブ賞を…

『TUGUMI』(中央公論社)吉本ばなな

映画(<出演>牧瀬里穂、中嶋朋子)の方を先に見た。よって、感想といってもその先入観のため本をのみ読んだ方とは違ったものになってしまうだろう。 小説は、「まりあ」(「つぐみ」の従姉)の一人称の語りにより進められていく。 ひと夏の「つぐみ」と彼…

『喜びは悲しみのあとに』(幻冬舎)上原隆

前著『友がみな我よりえらく見える日は』同様、有名人は作家と元プロ野球選手だけで、あとは無名の人ばかり。ただ、登場する無名人の趣が前著とは異なる。在日の外国人、倒産した会社の元社員達、キャッチ・セールスの男、インポテンツの男、子殺し裁判を傍…

『天然日より』(幻冬舎)石田ゆり子

著者は、女優でかつ同じく女優・石田ひかりの姉。何となく手に取り読み始めたのだが、なかなかすてきな素敵な感性の持ち主だ。プライベートな話を肩ひじはらずに自分の言葉で綴っているので、好感がもてる。ペットの話。ドラマの話。自己の内面の話。芸能界…

「友がみな我よりえらく見える日は」(幻冬舎アウトロー文庫)上原隆

beatleさんが紹介されていて何か惹かれるものを感じたので、手にしたところ。一気呵成に読破。 本の裏表紙に「読むとなぜか心が軽くあたたかになる、新しいタイプのノンフィクション。」とあるが 看板に偽りなし、である。内容自体は、決して明るいものでな…

「大林宣彦のa movie book 尾道(新版)」

大林作品で尾道の光景をみたら、次に現場にその身を置きたくなる。そんな人に、お薦めだ。 逆説的な言い方をすると、本書から大林作品に入ろうとすると何か仲間はずれにされたような気がするだろう。 まず、どれでもいい映画を観てから読め! である。

モラル・ハザード (カドカワエンタテインメント)伊野上 裕伸 (著)

内容(「BOOK」データベースより) どんでん返しにつぐどんでん返し!裏切りにつぐ裏切り!保険金を手に入れるのは誰なのか?保険金詐欺の常習犯・滝村隆次が目をつけた高額商品“法人役員総合保証保険”。最後の大勝負として立てた詐欺計画は、抜かりなく進行し…

「下妻物語」嶽本野ばら

原作と映画が、違うのは当たり前のことだが、往々にしてどちらか一方に思い入れがあると、他方に対して失望感を懐くものだ。しかし、両者が『下妻物語』というタイトルであっても、それそれが独立した作品となっている。 小説の作法に則った原作を、映画の文…

『対岸の彼女』(文藝春秋)角田光代

beatleさんのご紹介の書籍。先日たまたま入った古書店にて遭遇。これも何かの縁と思い、すぐさま購入し、読んでみた。主人公は、小夜子と葵。専業主婦と独身の会社社長。小夜子はいつも集団に馴染めず、娘のあかりも同様だ。一方、小夜子の目から見た葵は、…

『池波正太郎劇場』(新潮新書 ¥700)重森敦之

「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の人気シリーズの作者も物故してはや16年。時代小説を書く作家は多いけれども、未だによく読まれている。時代を越えて、人間が作品中に息づいている ことが過去のものにしない一因なのでは。 加えて、登場…

『青春デンデケデケデケ』芦原すなお(初出、河出書房新社、<後に、角川文庫>)

大林宣彦により映画化され好評を博したものの原作。全体の章立ては以下の通り。 1 It's like thunder,lightnin'!(雷はんじゃ、稲妻じゃ!) 2 Strummin' my pain with his fingers(わしの胸のせつなさをあいつはちろちろ爪弾いて) 3 Let's have a party!…

『関西人の正体』 井上 章一・著 (小学館文庫)

プロ野球開幕から1ヶ月が経過した。まだまだ阪神ファン−猛虎党−は「今年は優勝やで」と元気がいい。 関西ローカルの朝番組、朝日放送「おはよう朝日です」のむちゃくちゃで微笑ましいスポーツ・コーナーも健在。(思いっきり、阪神びいきのコーナー)東京から…

「まっぷたつの子爵 文学のおくりもの 2」(晶文社)イタロ・カルヴィーノ (著), 河島 英昭 (翻訳)

タイシホさん(id:taishiho)の紹介で読み始める。面白い、一気に読めた。が、考えさせられた。 内容(「MARC」データベースより)ぼくのおじさん、メダルド子爵は、戦争で敵の砲弾をあびて、まっぷたつにふっとんだ。左右べつべつに故郷の村にもどった子爵が…

『ゴ−外①−翻弄されない視座をもつ−』(アスコム)小林よしのり

攻撃の矛先、その内容には一定の説得力あり。その一方で、小林の「ナショナリズム」観には異議あり。今回「親米保守」をキ−ワ−ドとして、メディア(読売新聞社,サンケイ新聞,文藝春秋社,新潮社etc.)を検証。対象に対する批判は,論理的である。しかし小林…

30数年ぶりの再読。話のおおよそは覚えていたつもりだったが、 やはり忘れていた点も多々あり。記憶力というものが、いかに頼 りないものであるかを実感。近代的「自我」と封建的家制度の衝突は、テーマとしてはいささ か古い。しかし、人としての親子の情…

書評『中国古代的市場與貿易』by丁長清(「中国古代生活叢書」商務)

書題には「古代」とあるが、内容は宋代以降が中心。例えば、「牲畜農具交易」(pp.97-99)でも、史料を用いての解説は清代のものを利用している。管見の限りでは、唐以前は簡略に記載されている。 うーむ、どうも看板に偽り有りのような…。